TIME before 55

頭良くないし機転も利かない。でも夢の大きさは誰にも負けない。

アダルトサイト規制の難しい問題 ~表現の自由/性教育の観点から~

Cindy

少し前にイギリスではインターネットのコンテンツ規制に関する議論が盛り上がったこともあって多くの記事がありましたが、現在では日本でACTAが可決されたこともあり下火になってしまいました。そこで今回はあまり語られることのなくなったインターネットコンテンツ規制、特に成人向けアダルトサイトの規制について考えてみようと思います。



まず多く語られるのが表現の自由の問題

例えばウクライナの女性人権啓発NGOの「FEMEN」は自らヌードになりショーをすることで、問題提起を行う団体として知られていますが(先日2月13日にもノートルダム寺院にてトップレスでデモ活動をしています)、彼女らの動画/写真は一見すると女性が上半身裸で映っているものですが、れっきとした政治活動に他なりません。

こういった政治活動だけでなく他にもアートで裸を扱ったりする場面はよく見られるため、アダルト的なものなのか他の分野に類するものなのかの線引きが難しくなっています

要は見た側の認識に依存することになるのですが、それを判断するのは市民ではなく他でもない裁判官ということになり、複雑な問題です。

いくらアダルトサイトといえども、それを規制すると表現の自由の侵害に抵触する可能性はあります。ただ単に受け取り手の性的な興味をそそることが目的ではなく、ヌードやセミヌードになった資料をネットに投稿した場合にはそれは表現活動ということになります。

ひとつの何らかの主張をもってヌードになっているのですから、それを規制してしまえば小説を発禁処分にするのと同等のことをしたことになり、問題にもなるでしょう。

ただこれはどれだけ世論が賛成するか不透明な部分もあります。そういった主張の手法に寛容な市民ならば理解を得ることは容易いかもしれませんが、裸になる事自体をタブー視してしまう文化圏では難しいかもしれません。

そしてもうひとつ挙げられるのが性に関するコンテンツを排除することで性の正しい知識の普及が不十分になることです。

アダルトコンテンツをフィルタリングする際に難しいと言われるのが、性の正しい知識をしようとしているサイトなのか性的な欲求を満たすために作られたサイトなのかを見分けることがロボットには難しいということ。

本来ならば人間がひとつひとつのサイトを確認し内容を見て判断するのが一番良いのですが、星の数ほどのサイトがある現代ではそれは不可能に近いでしょう。そうなるとどうしてもロボットに任せることになるのですが、そこで問題が生じるということです。

アダルトサイトなのかはたまた製作者側の善意で性の知識の普及を図ったものなのか。キーワードだけで判断するのは技術的には難しいとのことです。ロボットがアダルトサイトだと判断したとしても、人間の目を通せばそれは性教育のためにサイトである場合もあるからです。

性教育をネット上で行うことに関しては有効性が議論の的になるところですが、特に十分に性教育がなされない国においてはインターネット経由で情報を仕入れる場合もあり、役に立っている事例もあるようです。以下の事例は中国から。

「これまでに正式な性教育を受けたことがない」は18%で、約半数が「性の知識はインターネットで得ている」と回答した。中国で、性教育が十分になされていない実態も明らかとなった。

欧米を中心とした国は早期から性教育を積極的に施し、性の正しい知識に努めていることで有名ですが、日本のような国ではどうしても義務教育ではカバーしきれない部分もあり、遅れがちなのが指摘されています。

そういった意味では、アダルトコンテンツが含まれているという理由で性の正しい知識が削除されてしまえば、それは青少年にとっては害悪もそれなりに生じてしまうことになります。

そして最後の問題がいくらフィルタリングをしたりアダルトコンテンツ削除をしたとしても抜け穴が必ずあるということ。

一般的によく言われるブロッキングの方法が青少年が携帯電話から成人向けサイトにアクセスしないようにフィルタリングをすること。しかし多くの子供達が携帯電話だけでなくPCも操作できる時代にそのようなことをやっていてもあまり意味は無いといえます。

子どもがよく使う手としては家族共有のPCをこっそりと使うことだ。自分の携帯電話では接続できないサイトもPCならばいくらでも閲覧できます。これではフィルタリングした所で、結局は閲覧ができるので閲覧する母数としては減少が期待できるが、根本的な解決にはなっていないのです。

さらに動画をEmbedして掲載しているサイトはいくらでもあるし、コピーサイトも沢山あります。そのためコンテンツ自体を削除しても、その動画をダウンロードしている有志がまたほかのサイトに投稿するというイタチごっこが繰り広げられています。

全くもってアダルト動画サイトではないYouTubeにも成年向け映画はかなり投稿されているし、Google公認のボリウッド映画まであるのです。そんな一般的に認められているコンテンツ提供者もアダルトコンテンツを提供している現状に鑑みると、根絶は厳しいことだとわかります。

このようにアダルトサイトのブロックは、ただ単にコンテンツ削除をすれば良いだとか表現の自由に配慮した形態で行えば良いという問題ではないのです。これはメディア評論家が今までひたすらこの問題を単純化して議論してきたせいもありますが、今後はそこに留意しながら議論を進めていく必要があるといえます。