TIME before 55

頭良くないし機転も利かない。でも夢の大きさは誰にも負けない。

アラブの春を振り返ってみる

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2009年のWikiLeaksによる無人機ヘリによる市民・CNN記者の無差別銃撃、アメリカ外交公電の漏洩、創設者ジュリアン・アサンジの逮捕。2010年のチュニジアの「ジャスミン革命」に端を発するアフリカ・中東のイスラム圏での革命・・・・。

記憶に新しい方も多いかと思いますが、ここでの主役は市民でした。新聞記者やテレビ局ではありません。
もちろん報道禁止の処分を受けたにもかかわらず、エジプトで取材を続けたAl Jazeelaの功績は大きいと言えますし、市民に僅かな情報を与える中心的な存在でした。では、Al Jazeelaが活動できたのは何故でしょうか?

それは市民の情報発信の力です。
Facebookのコミュニティを通じて呼びかけられたデモがやがて数百万人規模にまで膨れ上がり通りを埋め尽くし、やがてはタハリール広場(Tahrir Sq.)を占拠するに至りました。
そして発せられた情報はTwitterを通じて広まり、次々にRTとコメントが加えられ、当局の接近を互いに知らせる無線のような働きもしました。

しかし当局はそのことを十分にわかっていますから、観光よりも内政(市民の弾圧)を重視するように方針転換すると、FacebookTwitterを使用不能にします。
すると反体制派は出会い系サイトにアカウントを開設し、そこで情報の交換を始めました。まさにイタチごっこです。

すると当局は我慢ならなくなり、インターネットそのものを遮断。携帯電話回線も使えなくし、SMSはもちろん通話すらもできなくなりました。

それでも一部の有志は法の目を掻い潜りインターネットに接続させ、一部は使うことができました。
時間が経つに連れてそれも広まっていき、一部ではあるもののインターネットを使うことが出来る人は広まりました。政府もあまりの弾圧に耐え切れなくなり、インターネットを一部「解放」という形で譲歩をします。

それでもなおFacebookは使えませんから、人々はTwitterに群がります。
するとそこにGoogleが強力なtweetツール「Speak2Tweet」を導入します。これはTwitter社と協力して作ったもので、Google音声認識機能を用いて、携帯電話に話しかけるとそれが文字に変換され、tweetされるというものです。

それまでにも「SayNow」という音声をtweetするサービスは広く使われていましたが、音声ファイルをネット上にアップし、リンクをtweetするだけでした。しかし、Speak2Tweetは文字に変換されると、すぐに情報を読み取ることができるので、とても画期的なツールでした。

インターネットが遮断され携帯電話回線が使えなくなっても、有志によって無料のインターネットが開設され、電話番号とユーザー名、パスワードを入力するだけで使える、というものも現れました。

反体制派の活動が次第に成果を得てくると、市民の中にもリーダーを作る気運が高まります。
結果から言うとリーダーは結局生まれず「皆がリーダー」の精神の元、一人一人が活動の柱となり革命は進んでいきました。

Facebookで「admin」を名乗り、デモを呼びかけたワエル・ゴニム(Wael Ghonim)さんもリーダーの候補となった一人です。

彼は一時政権側に身柄を拘束されましたが、大使館の必死の努力の末、2/7に解放されました。
その後、彼はリーダーに推薦されても、市民の先頭に立つことはなく演説をしたのみですが、彼の功績は大変大きいと言っても良いでしょう。

実はこの時も、デモを呼びかけたゴニムさんが「アメリカの」Google社員であるために、デモの呼びかけはアメリカによるもの、という陰謀論が立ちましたが、すぐにその火は消されました。

革命はエジプトだけではありませんでした。バーレン、イエメン、リビア、中国、イラン、南部が独立を勝ちとったスーダンでさえも反体制派による大規模なデモが発生しました。いずれの場合も治安部隊による暴力に訴えた強制排除により市民は抵抗が難しくなりました。

バーレンやリビアでは治安維持の余りにも過剰な暴力行為・殺戮に怒りを爆発させた市民が治安部隊と対等に戦います。
リビアでは市民が民兵を作り、軍の中にも多くの離反が発生し反体制派に加わったため、反体制派はもはや「民兵」というよりも「反乱軍」に近い様相となりました。

というよりもむしろカダフィ側が「反乱軍」で、民衆側が「正規軍」なのかもしれません。どちらが本当の政府なのか、もはや見分けがつかない状況だったのです。

そして反体制派は暫定政府を樹立し、2つの政権が誕生しました。

反体制派が支配下におく東部のベンガジ(Benghazi)を中心とした「暫定政府」と、西部のトリポリ(Tripoli)を中心に陣を構える「カダフィ側」という東西の政権ができたのです。
結論から言うと、民兵軍がリビア内の主要都市、カダフィ軍の拠点を次々と押えて行き包囲網を作った結果、カダフィは拘束され民兵の一人に銃で殺害されました。

カダフィの影響力を排除したとはいえ、当時の政権幹部が経歴を隠して選挙に出馬したり、ひとつの目標を達成した民兵同士が抗争したり、決して平和とは言えない状況下にあるリビアですが、とりあえず民主化へ進みつつあると言えるでしょう。

しかしながらエジプトではムバラク政権崩壊後は今度は軍政が権力を掌握し、民衆への圧力を強め、毎日多くの死者が出ています。革命が終わったと言える状況下にはありません。国際社会は新たな手を打つ必要があるでしょう。




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