TIME before 55

頭良くないし機転も利かない。でも夢の大きさは誰にも負けない。

イルカ・クジラ猟問題を掘り起こしてみる (1)

写真:Save Japan Dolphins 提供

世界中で話題をさらった映画「The Cove」。これはイルカ猟に反対するSave Japan Dolphins代表のリチャード・オバリー氏が自ら和歌山県東牟婁郡太地町を訪れ、実力行使を含む猟への抗議活動を描いたドキュメンタリー映画です。

右翼団体が劇場前を占拠して公開を阻止したり、住民らの顔を映像の一部に含まれているために肖像権を巡る問題も噴出し、複雑に問題が絡み合いました。
そうしているうちに本題のイルカ漁に関する議論は徐々に覚めていき、今となってはめっきり報道が途絶えてしまいました。

そこで、今回は世論を喚起する意味でもこの問題にもう一度スポットライトを当て、考えていこうとおみます。以前は捕鯨に関する記事(1 2 3)を書いたのですが、今回はイルカに特化しようと思います。

この問題に関して記憶が薄れてしまった方も多いかもしれません。おさらいしておきましょう。

和歌山県太地町はイルカ漁が街の中心産業となっている街で、町内には博物館があり、イルカとの自由なふれあいが出来る街として名前を売っています。

一方で、イルカは食用にもされていて、湾内にイルカを誘導し船上からモリで突き殺す、通称「追い込み猟」が行われています。
この猟法は、海中に入れた2本の金属棒を衝突させることでイルカの嫌う音を発生させ、複数の小舟で次々に湾内に追い込み、最後には漁網で囲って最後には突き殺すやり方です。

この殺し方は「残酷」であるとして、イルカ猟反対論者からバッシングを浴びていますが、この映画ではそれだけでなくイルカを食用とする危険性も同時に訴えています。

また、スーパーマーケットに並ぶイルカ肉を標本として検査にかけると、厚生労働省の定める魚介類(クジラ類含む)由来の水銀の暫定規制値(総水銀:0.4ppm メチル水銀:0.3ppm)をはるかに上回る量の水銀が検出されることも映像の中で紹介されていました。
映画の中だけではなく、各団体による調査でもこの事実は多く発見されていて、問題視されています。

Sea Shepherdを始めとする生物保護団体の多くはクジラ・イルカ類の猟に反対する論拠として、主に「哺乳類としての優越性」や「殺傷方法の残酷さ」を挙げています。
しかしながら、「どの種が動物の中で"優れているか"」について明確な国際的取り決めが存在していない以上、これらの主張は論拠を失っています。客観性がないのです。

ですから、ここでは一度イルカ・クジラを「かわいそうな動物」ではなく「危険な食品」として議論を進めていこうと思います。

2006年から2007年にかけて行われたEnvironmental Investigation Egency(EIA)は、67のクジラ類由来の食品をサンプルとして、しがらみのない科学者にDNA及び化学物質の分析を依頼した検査結果を発表しました。

以下はEIAの資料「有害制作 汚染されたクジラ・イルカ由来食品の販売を禁止しない日本」から引用した調査結果です。

  • 52%の製品は、水銀、メチル水銀、PCB、のいずれかにおいて日本政府の定める暫定規制値を超えていた。
  • イシイルカの脂身のひとつから、4.02ppmのPCBが検出された。これは日本政府が定める暫定規制値0.5ppmを8倍以上も上回る数値だ。
  • 最も高い水銀濃度が検出されたのは種類が表示されていないクジラ由来食品からで、6.9ppmの水銀(暫定規制値の17倍以上)、3.77ppmのメチル水銀(同じく12倍以上)が含まれていた。
  • 鯨類由来食品の26%以上は、食品原料の鯨の種類やその一般名を正確に表示していなかった。
  • DNA鑑定で種類が確認できた(あるいは少なくとも"イルカ"であることが特定できた)33の食品のうち、63%はハクジラ類ではなくヒゲクジラ類だった。それにもかかわらず、(*)、33を超える食品の水銀濃度、メチル水銀濃度は暫定規制値を超えていた。 (*)訳者注:一般にハクジラ類のほうがヒゲクジラ類よりも汚染濃度が高いと考えられている。

また、エルザ自然保護の会による資料「イルカの追い込み猟」で捕殺されたイルカ肉の水銀汚染報告(2004・2006~2008)」によると、バンドウイルカは暫定規制値の48倍(2004/11/11)、スジイルカは同13.5倍(2006/12/22)、ゴンドウ(腹肉)は同9.55倍(2007/2/6)、バンドウイルカは総水銀29.5倍、メチル水銀5倍、PCB2.8倍という驚くべき結果が出ています。

※ちなみに調査を行った検査機関は日本食品分析センター、北海道医療大学薬学部遠藤哲也准教授、日本食品衛生協会、日本エコロジー研究所です。

なぜこれほど水銀がクジラ・イルカから検出されるかというと、食物連鎖による生物濃縮により、その末端にいる大型魚類が多くの水銀を摂取するからです。

この濃度は魚の種類によって大きく異なりますが、特にマグロ・クジラ・イルカなどの大型魚類、キンメダイ、ムツなどの深海魚、サメ類などから多く検出され、厚生労働省は妊婦に注意を呼びかけられています。


また、水銀が体内に蓄積すると感覚障害、視野障害聴覚障害などが発生します。特に胎児への影響は甚大です。※詳しくはこちら

(2)へ続く