TIME before 55

頭良くないし機転も利かない。でも夢の大きさは誰にも負けない。

インドと日本はヨーロッパよりも遠い?

今日紹介するのは小田実さんの『何でも見てやろう』。この本は小田実さん本人がフルブライト・プログラムでの留学をきっかけに世界旅行をした時のことを書いたもので、旅日記をまとめたものになっています。


この本は400ページを超える長編になっているのですが、内容はてんこ盛り、1ページ1ページに新たな発見がある本になっています。初版は1979年で30年以上前の本ですが、当時の世界各国の社会情勢や日本が外国からどう見られているかなどが旅人の目線で語られている面白い構成になっています。

私は先日インドに旅行したこともあって、インドについてのページは特に深く読み込んだのですが、その中でも気になるものをご紹介します。

たぶん、これはひとがよく言うことだが、日本と「西洋」の距離は、日本が高度に西欧化された社会であるという事実をぜんぶぬきにしても、もともと「西洋」とアラブやインドの世界との距離よりも小さいのではないか。逆にいうと、そういう下地があったからこそ、日本は明治以来の短時日のあいだに、かくも急速に西欧化されたのではないか。

~中略~

それらのものの西欧化には、もともと「西洋」の思想と共通のもの、それとすくなくともおつきあいできる共通の基盤のようなものが存在してはじめて可能であったのにちがいないのだ。そしてその共通の基盤というものは、やはり、それは「ヒューマニズム」というものであろう。

なるほど、日本は明治維新以降の激しい西欧化・近代化、そして敗戦後アメリカに8年間占領されて、多くの西洋の文化も受け入れました(War Guilt Information Programは代表的なものでしょう)。それによって日本は他国に類例を見ないほどの変化を遂げました。

しかしながらインドはイギリスに植民地支配され、インディラ・ガンディーの経済開放、そして近年の経済勃興にも関わらず西洋の文化を大々的には取り入れていません。確かに携帯電話は勿論のこと、多くの面で西洋の影響は感じますが、自らの文化を大事に守っている様子はあります。

一番わかりやすいのは市街地に行って見ることです。民族衣装に身を包んだ色鮮やかな女性達が歩いているのがわかります。レストランのBGMでは民族音楽が流れています。日本のようにジャズやクラシック、ロックが流れていることなどは稀です。そういった点でインドは自国文化・文明を大切にしている印象を受けました。

それに対して日本では和服を着るのは成人式やお正月、結婚式くらいなもので、行事の時にほぼ固定されています。日常的には老若男女西洋からもたらされた洋服に身を包み、携帯電話の画面を見ながら歩いています。

そうそう、インド人は若者であっても携帯電話やiPodの画面を覗き込みながら歩いている人はいませんでしたよ。電車内でもそうでした。これも不思議な現象でした。携帯電話を持っているからといって必ずしも富裕層であるわけでは決して無く、貧しい人々もインフラとして持っていました。

しかし熱中してずっと画面に囚われているような様子は一度も見ませんでした。彼らが携帯電話を取り出すのは記念撮影をする時と電話をするときだけです。インド人はメールよりも電話の方が多いようです。

話題が逸れてしまったので元に戻すと、とにかくインドは本当にイギリスの植民地になったのかと不思議に思うほど西欧化された印象は受けませんでした。もちろんイギリスの資本は大量に流入しインド経済を支えているのは紛れもない事実なのですが、それは植民地支配の影響ではなく経済開放のせいですね。植民地支配というともっと構造的に変えさせられた印象があったのですが、そうでもないようです。

それに対して日本はほんの数年間の占領が直接的な西洋からの影響であったのに、インド以上に西欧化され生活習慣にまでそれは影響を受けています。結婚のやり方、食べ物にまで深く入り込んでいます。インドでは誰もがカレーやナンを当たり前のように食べていますし、結婚式も両親によるArrange Marriageが9割以上を占めています。

この2つの国のここまでの違いは何がもたらしたのか?私には不思議でなりません。


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