TIME before 55

頭良くないし機転も利かない。でも夢の大きさは誰にも負けない。

情報監視法 #CISPA の正体と、その影響について

Facebook Mobile iPhone

日本時間4月26日、アメリカ連邦議会下院でCyber Intelligence and Sharing Protection Act (略して CISPA)が可決されました。http://japan.cnet.com/news/business/35016661/

CISPAの全文和訳はこちら


4月29日18時現在では、日本国内の報道は極めて僅かで、ITproやCNETが扱っているに留まっていますが、この法案はアメリカにとって重大な意味を持っています。
ではこのCISPAとは何なのか。説明したいと思います。簡単にいえば、ネット上の個人情報を政府が入手することを合法化する法律です。この法律が成立すれば、政府はSNSISPからアメリカ政府は容易に個人情報を収集することができるようになるのです。

これに対して、人権侵害につながるとして多くの市民が反発し、AnonymousはYouTubeTwitterFacebookで反対の声を上げるよう強く訴えかけました。この結果ネット上で大きな運動となり、注目を集めています。


そして結果的に80万人近くの署名を集めはしましたが、国内外の多くの大手メディアがこの件についてはあまり報道がなされていないので、政府側の対応や方針についての情報の入手は極めて困難な状態になっているのが現状です。

この法律にはFacebookの他、IntelやVerizon、MicrosoftAT&T、TechAmerica,、Boeing,、IBM,、Oracle,、Symantec、CTIAなど大手IT企業を中心として、複数の企業が賛成の意を示しています。これもこの法律が極めて強い効力を持っている理由です。

これに対して、Twitterを中心にこの法案へ署名運動やハッシュタグでの反対運動が巻き起こり、議会議員へのメッセージが多く発信される事態となりました。


CISPAの中でおそらく最も論争の的となっている条項は、「その他のいかなる法規定にもかかわらず」、企業は国土安全保障省、IRS(米国税庁)、国家安全保障局と情報を共有することができるとしている。CISPA法案の立案者は、この「〜にもかかわらず」という文言を含めることで、盗聴、学歴、医療プライバシーといった情報の取り扱いを規定する法律を含む、あらゆる既存の連邦法や州法をしのぐ法律の制定を意図している。


早い時期に警告を発していたネットの自由保護団体Center for Democracy and Technologyが挙げるこの法案の主な問題点は以下の4つ。


・政府が共有できる“情報”の定義がとても広く、ほとんど無制限な上、他のすべての法律に優先する
・政府がプライベートなコミュニケーションを監視する権限拡大につながる
・サイバーセキュリティの取り組みのコントロールが民間から軍にシフトする
・いったん政府が入手した個人情報は、サイバーセキュリティ目的以外にも利用できる


普通であれば「ユーザーの個人情報を漏洩させるのは規約違反」だとしてIT企業は反対派に回るだろうと思うかもしれませんが、彼らは自らがユーザー情報をスパイ活動に用いていないことをアメリカ政府に証明したいという意図があるようです。


ただ、この法案成立によってサイバー攻撃の予防を可能にするという意見もあり、諸刃の剣であることは否めないようです。これについて反対派は「法律など作らずに、(危険人物がネット上で発見されれば)裁判所に訴えて警告を与えれば良い」としています。


一方、賛成派は「95%の情報に関する被害は、社会保障番号(Social Security Number)やクレジットカード番号などの個人に関するもの」だとして、法案成立のメリットを強調しています。


ここで重要になってくるのは、「国家」か「クラッカー」のどちらを、より大きな脅威と見なすかです。「個人情報に関係のない個人情報は破棄される」とされており、また「必ずしも政府へ個人情報が渡るとは限らない」という主張もあり、政府を信用するか否か、の問題にも議論は及んでいます。


こちらのPC Worldの記事では賛成・反対両派の主張が掲載されていて、とても読み応えのある記事になっています。http://www.pcworld.com/article/254669/cispa_4_viewpoints_you_should_hear.html


ハッシュタグ #CISPA では現在でも「アラブの春」さながらの激論が繰り広げられており、SOPA成立時を思わせる言論空間が生み出されています。


ところで全世界では9億人の人々がFacebookという企業を信用して個人情報を提供しています。サイバー攻撃による情報漏洩の可能性を覚悟しながらも、GPSによる位置情報までもサイト上に掲載しているのです。


この反対運動から読み取れるのは「Facebookは信頼するけど、政府は恐い」という現象です。政府がFacebookの情報を掌握するとなると、いくらプライバシー設定を「Personal」にしたところで一度掲載してしまえば意味はなくなります。まして「Global」の人々は今まで以上に危険にさらされる可能性が高くなります。


私はこの「企業なら信用できる」という人々の姿勢に、大変違和感を覚えます。政府なら憲法に拘束されますから、民主主義が機能している限りは、過剰な権力行使は不可能です。しかし、私企業となると、その活動は一国に制限されませんから、ある国では不可能なことでも他の国ではできることがあります。


また、企業は行政府に圧力をかけることで、行動範囲を広げることも可能です。「企業なら悪法を起こさない」こう思い込むことで、不安を消し去ろうとしているのだろうと思います。


CISPAは決して他人事ではありません。世界の中でもとりわけ著作権に関してうるさい日本ならば、著作権者の保護を理由にこれに似た法律を作ろうとすることも考えられるからです。


しかし、日本はマスメディアのみならずネットメディアさえも、ほどんとCISPAについてはノータッチです。これはとても危険な事態です。


そしてここでもうひとつ、国外メディアの報道状況についても触れておこうと思います。過去1週間でアメリカの各大手メディアが記事にした数を挙げてみます。




  • BBC(3) 
  • USA Today(6) 
  • NYT(2) 
  • Washington Post(13) 
  • ABC(72) 
  • Global Post(299) 
  • ProPublica(63) 
  • HuffPost(802) 
  • The Guardian(2600) 
  • Foreign Policy(205) 
  • CBS(1340) 
  • AJE(4) 




さらにニュース検索にかけると、大手メディアの報道がどれだけ少ないかよくわかります。→http://goo.gl/vGpY8


SOPAの時はGoogleWikipediaまでも反対声明を発表し、アメリカのWikipediaにいたってはサービスを一日だけ中止までしていたのに。今回の「静けさ」はものすごく不気味です。そしてなぜかTwitterの「世界中のトレンド」には #CISPA が掲載されていません。WikiLeaksの時と同じです。

このように海外報道ではかなりのバラつきが見られます。WikiLeaksのアメリカ外交公電公開の際には、直前にNYTがアメリカ政府と接触していたことを考えると、今回もそういった何らかの圧力が働いている可能性アリ。


このように考えていくと、公正な報道がなされているとされるアメリカでも、国の重要事に関してはそうでもないことがよくわかります。ホワイトハウスは法案の署名を拒否する姿勢で、法律が成立することはなさそうです。





>>PC World - CISPA: 4 Viewpoints You Should Hear
>>CNET - 米下院、サイバーセキュリティ法案「CISPA」を可決
>>CNET -米ホワイトハウス、サイバーセキュリティ法案「CISPA」に反対姿勢--拒否権の発動を警告