TIME before 55

頭良くないし機転も利かない。でも夢の大きさは誰にも負けない。

Amazon.comが二次創作物を販売開始、日本のオタク文化の行方は?

A Night Out

アメリカのAmazon.comが著作者から許諾を得て二次創作物を公式に販売するサービス「Amazon Words」を開始しました。これによって作品を表現する媒体が広がり、これまでの産業構造に大きな影響を及ぼす可能性が出てきます。


ゲームや漫画、テレビドラマなど既存の著作物を元にした創作は英語では Fan Fiction などと呼ばれ、ネット上でも盛んに作品が公開されていますが、Kindle など向けの電子書籍として正規に流通させようとしても、権利者との交渉というハードルのため難しいのが現状でした。

そこで Kindle Worlds ではアマゾンが原著作者とあらかじめ交渉し、特定の作品世界 (Worlds) についてライセンスを獲得します。

二次創作の作者はアマゾンによって権利がクリアされた特定の作品世界を使って自分の作品を出版でき、アマゾンは売り上げから作者と原作の権利者の双方に印税を支払う仕組みです。

これはアメリカでの話ですが、これまで「非公式」作品として扱われてきた二次創作が巨大企業によってサポートされることで、コンテンツ制作者側にはより資金が流入することになり制作側のエンパワーメントもなされることになりそうです。

一方、日本ではコミケでは二次創作物が販売されていますが、日本でもAmazon Wordsが開始されればm主流の流通市場を介して販売され市場拡大が見込めそうです。これが「クール・ジャパン」と呼ばれるアニメ市場を中心としたオタク文化を生み出してきた源泉でもあるのですから、メインストリームに出て来なかったものがより多くの人々の目に触れる機会を作ることになりそうです。

しかしながら、もし日本がTPPへの参加が実現すれば、その流れは一気に変わることがあります。特にTPPの中で懸念されているのが著作権についての規定です。議論が不透明のため詳細がわかっていない部分もありますが、原則としては著作権失効までの期間がアメリカの法律の影響を受けて延長されること、二次創作に関する取り決めが厳しくなることが予想されています。

これは「非親告罪化」と呼ばれるもので、これまで著作者からの訴えがなければ流通が停止されることはなかった(親告罪)ものが、TPP参加によって検察による起訴のみで二次創作物が禁止される可能性がある(非親告罪)のです。

これによって最も影響を受けるのはコミケです。同人誌が発売されているコミケが摘発によって開催できなくなり市場規模が大幅に縮小する可能性すらあるのです。

 「現在コミケは夏冬とも50万人規模の入場者と3万5千サークルもの参加サークル数があり、世界でも例がないユーザー発コンテンツの祭典です。主催者側の調査では、そのうち75%前後が多かれ少なかれ既存のコンテンツのパロディ的な作品だと言われます。」

こうした二次創作は、相当数が現行法では既存作品の無断『翻案』となり、仮に裁判となれば著作権侵害とされそうです」

つまり、現行の著作権法においてさえも、コミケに並ぶ二次創作物の多くは、著作者が持っている著作権の一つ「翻案権」を侵害している可能性があるというのだ。では、なぜコミケは堂々と開催されているのだろうか。

「これまでのところは、刑事摘発や紛争に至ったケースはありますが、必ずしも多くはありません。というのは、オリジナルの作家や出版界側には、『あれは原作のファン活動の延長だ』という意識があるからです。ある程度シーンを盛り上げる側面もあると思っている。

加えて、コミケから人気作家が生まれたり、現役の作家がコミケに参加するケースも増えてきた。ですから、黙認という程ではないのですが、いわば『放置』してきた。無論、行き過ぎがあれば怒る。つまり、プロ側とコミケ側は、ある種の『あ・うんの呼吸』で共存してきたとも言えそうなのです」

このようにクール・ジャパンを謳いながら財界に擦り寄った日本政府は矛盾を孕んだ方向に突き進むことになりそうです。日本の文化を輸出したい反面で、政治の票も欲しいそうなればどちらを優先するかの選択であったわけですが、政府はアニメにはそれ程興味がなかったのかもしれません。

自称「アニメ好き」の麻生太郎さんが内閣にいながらも漠然とした方針でTPPに突き進む日本には波乱が待ち受けているかもしれません。しかしそれはネットを中心とした草の根の活動で覆すことのできる可能性も秘めているのも確かです。著作権に厳しいアメリカですら大企業が二次創作物の販売に乗り出しているのですから、日本の同人誌関係者も一丸となって政府に物申すべき時は既に訪れているのかもしれません。

著作権の厳しいアメリカでこのように市場拡大が見込まれる中で、ストップをかけることができるのは今が最後でしょう。これまで政治とは距離を置いてきた同人誌業界に、生き残りを選択する瞬間が訪れているように思えます。

<<引用>>
ITmedia "TPP参加で「コミケ」はどうなる? 「2次創作」が罪に問われる可能性は"